資産565万の俺が一番下手なのは「使う力」だった。貯める力の副作用

積立グラフの隣で、財布の紐だけが固く閉じている対比イラスト 投資マインド
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積立の設定は、もう1ヶ月以上触っていない。家計簿は明細から自動で組み上がる。含み損益はアプリを開けば1秒で分かる。ここまで自動化しておいて、ひとつだけ手つかずのスキルがある。「使う」だ。

前回、映画のチケット代だけは値段を気にせず払えているという自分の穴に気づいた話を書いた。あれは気づきの記事だった。今回はその続き――気づいただけで終わらせず、使う力そのものをどう鍛えるかの話をする。

結論を先に言う。貯める力・増やす力は自動化できる。使う力だけは、一生手動でしか鍛えられない。だから貯めるのが得意な人ほど、意識して使う練習を予算付きでやる必要がある。


貯められる人ほど使えなくなる——不安の基準額は資産と一緒に育つ

長期投資を続けるほど、使う判断だけが苦手になっていないか。

これが妙に刺さった。

真面目に貯める力と、怖くて使えなくなる感覚は、たぶん同じ根から生えている。

理由は単純だ。資産が増えても、不安の基準額が同じペースで一緒に上がる。100万円のときは「500万あれば安心」と思っていた。500万に届いたら、今度は「1000万なければ」に基準がスライドする。

俺自身、資産565万円(2026年6月30日確定)まで来て、年末目標を700万円に切り替えたばかりだ。目標を数字で更新すること自体は悪くない。ただ、この更新に終わりが来ない構造だという自覚はある。

「もっと貯まれば自然と使えるようになるはず」と思う人もいるだろう。俺も昔はそう思っていた。でも俺自身、500万円に届いたら次は1000万円へ基準が動いた。待っているだけでは、使えるようになる日は来ない。

退職後の取り崩しなら、4%ルールという目安がある。元になった考え方は、ウィリアム・ベンゲンが1994年に過去の米国市場データを用いて示した。1998年には、米トリニティ大学のフィリップ・クーリー、カール・ハバード、ダニエル・ワルツの3名が、複数の資産配分と取り崩し率の成功率を検証した。過去データに基づく目安であり、将来を保証するものではない。俺はまだ取り崩しフェーズにない。だから「取り崩す時期になったら考える」と先送りにするのは、使う力の練習そのものを先送りにしているだけだ、と今は思っている。

「使う力」は才能じゃなく試行回数——数を打って、当たりだけ残す

モーガン・ハウセルの新刊『アート・オブ・スペンディングマネー』には、「新しいお金の使い方を試す」という章が設けられている。支出の満足は人それぞれの価値観で変わるという視点が扱われている一冊だ。

前回の記事で、お試し支出の目安として「資産の1〜3%」というレンジをすでに計算した。詳しい考え方は前編に譲る。

今回考えたいのは、その枠をどう設計して実際に回すかだ。答えは、当たりを狙い撃つことじゃない。小さな支出をいくつか試して、満足を感じたものだけを残す。俺はこれを「支出の試し買い」として受け取った。当たりが出るまで小さく試し、またやりたいものだけを繰り返す。一般解は存在しない。「高い時計がいい」も「シンプルな暮らしがいい」も、他人の正解であって自分の正解じゃない。

世間体を基準にした瞬間、この試行はすぐ歪む。世間体で選んだ支出ほど、「1万円使ったのに満足できなかった」になりやすい。

実験予算——「使う力」を検証するための予算を切る

ここは誤解されやすいので、先に上限側から書く。この予算は使い切る義務でも、支出を正当化するための言い訳でもない。何に使うと自分の満足度が上がるかを検証するための、上限つきの実験だ。

切り方は2通りある。

(a)仮置きとして、資産の1〜3%から切る。 565万円なら年5万6千円〜17万円。資産に比例して増えるので、貯めるほど実験の枠も広がる。

(b)年間の余剰資金から切る。 収入から生活費と積立を引いた残りの一部を、実験に回す考え方だ。資産がまだ少ない人は、こちらの方が実感を持ちやすい。

この1〜3%という数字は、俺が原文まで裏を取れたものではない。あくまで俺が実験予算を考えるための仮置きだ。誰にでも当てはまる正解ではない。だから最初は、資産比率よりも「失敗しても痛くない額」から始めればいいと思っている。

俺ならまず、月5,000円だけ「実験予算」として別枠にする。映画、本、作業環境、カフェ、ガジェット。使ったあとに「またやりたいか」だけメモする。満足しなかったら失敗ではなく、候補から外すだけだ。

すでに使う力に自信がある人には、この予算組みは不要かもしれない。俺のように、含み損益は毎日チェックするのに支出額はほとんど覚えていないタイプほど、上限を先に決めておく意味がある。

使い切れなかったらどうするか、という不安もあると思う。月5,000円で始めるなら、余っても翌月に上乗せしない。使わなかった分は、そのまま貯める力の方に戻るだけだ。

俺の当たり支出と死に支出

当たりから言う。冬ボーナスで買ったMac miniだ。冬ボーナスは、生活防衛資金に10万円、S&P500に10万円、残りを特別費とMac miniに振り分けた。Mac miniは、ブログ執筆とAIとの協働作業に使う生産財になった。買った瞬間は贅沢に思えたが、今は仕事道具として毎日動いている。

死に支出は、貯蓄型保険だ。月19,800円を払い続け、2024年に解約したときの返戻金は約800円だった。詐欺と同じ構造にハマっていた経験は別記事に書いた通り、「使い先を自分で決める力」がなかった時代の代表作だ。掛け捨てにして差額をNISAに回していれば、手数料構造そのものが違っていた。これは俺の場合の結果であり、解約を勧めるものではない。契約条件は人によって違う。

6月の配当は税引後5,357円だった。これは俺にとって、使っていいと線引きしやすい原資の実例だ。増やす目的で持っている株が、使う練習の材料もくれる。

現金は約219万円、生活費12.7ヶ月分ある。だから俺は月5,000円の実験を始められる。生活防衛資金がまだなら、使う練習より先にそちらを作る。生活防衛資金の考え方は別記事に譲る。今日はこれ以上広げない。

何のために貯めるかが決まってないと、一生使えない

俺は願望ノートというのを付けている。やりたいことを書いて、叶ったら✅を付けるだけの追記型ノートだ。先日見返して気づいた。✅が付いているのは「450万円到達」「500万円到達」——貯める系の2件だけ。使う側の願望には、まだひとつも✅がない。ここにも貯める偏重が、そのまま形になって残っていた。本来このノートは、使い先の実験ログにもなるはずだ。何に使いたいかを先に書いておけば、実験予算の行き先で迷わない。

副業サイドFIREの計画では、最初のマイルストーンを月4.3万円に置いている。生活費の25%をカバーする水準だ。ただ、月4.3万円を稼ぐこと自体が目的ではない。その金で何をしたいかまで決めて、初めて「使う自由」になる。目的が曖昧なままだと、いつまで経っても使う練習が始まらない。


今日やること

  • 「失敗しても痛くない額」で実験予算の上限を決める(俺は月5,000円から)
  • 今月ひとつだけ、初めての使い方を試す(映画でも本でもカフェでもいい)
  • 使ったあとに「またやりたいか」だけメモする(満足しなかったら失敗ではなく、候補から外すだけ)

まとめ

貯める力は俺たちを守ってくれる。でも貯めた金を人生の満足度に変えるのは、使う力の方だ。積立の設定を見直す暇があったら、今月ひとつ、新しい使い方を試そう。貯めた金は、使った瞬間にはじめて俺の味方になる。


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※本記事は俺個人の見解・体験を綴ったものであり、特定の金融商品の購入や支出方法を推奨するものではありません。金額はすべて自己申告に基づくものです。投資判断はご自身の責任でお願いします。

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