2026年7月、SNSでこんな投稿を見かけた。「新NISA脱落者、ガチで増えてる模様。やめる理由は損切りだけじゃなかった」。リプ欄には「始めるハードルは低いが続けるハードルは高い」「もう飽きちゃってやめた人もいる」という声が並んでいた。
実際、日本証券業協会の調査を見ると数字はもっと生々しい。つみたて投資枠の売却経験者は2024年の16.8%から2025年には35.5%へ、2倍以上に増えた。成長投資枠も24.7%から43.6%まで跳ね上がっている(出典:野村「Fin Wing」新NISA利用動向コラム/原典:日本証券業協会「新NISA開始後の利用動向に関する調査」、取得日:2026-07-04)。わずか1年で、売却経験者の割合がこれだけ動いている。
正直、こういう数字を見ると一瞬ドキッとする。俺も積立を始めてまだ2年目。同じ道を歩いている自覚はある。
結論を先に言う。俺は積立をやめない。理由は、脱落する人の大半が暴落で損切りしたわけじゃないと知っているからだ。
新NISA、脱落理由は損切りだけじゃない
「売却した」には、損切りだけじゃなく、リバランスや利益確定も含まれる。つまり脱落は、暴落の恐怖だけで起きるわけじゃない。もっと日常的な、地味な理由で起きる。
飽きて、なんとなくやめる
一番多いのがこれだ。「始めるハードルは低いが続けるハードルは高い」——さっきのSNS投稿への、ある返信がそのまま核心を突いていた。口座開設して積立設定した最初の数ヶ月は、評価額を見てるだけで楽しい。問題は、慣れてきた頃だ。日常に埋もれて、いつの間にか積立設定の存在すら忘れる。暴落じゃなく、退屈が最初の敵になる。
SNSの月30万勢と比べて、自分の積立額が惨めに見える
これが一番厄介だと思っている。NISAの年間投資枠は最大360万円、月換算で30万円。この上限が、そのままSNSでの「比較対象」になる。月30万積立の投稿を見た瞬間、自分の月1万・月5万が急にしょぼく見えてくる。それ、キミも一度は経験あるはずだ。
でも冷静に考えてほしい。制度の上限と、自分に必要な積立額は、そもそも別の話だ。上限まで積める人が正解で、自分がそれ以下なら間違い、という発想自体が罠だ。SNSのタイムラインに、自分の生活費や家族構成は映らない。見えているのは金額だけ。比較しているのは、他人の一部分と自分の全部だ。
だから俺は、比較する相手を変えた。SNSの誰かじゃなく、1年前の自分だ。俺のNISA積立(つみたて枠)は、1年目が月2万円。2年目の今は月3万円まで増額した。他人の月30万と並べれば誤差みたいな金額かもしれない。でも1年前の自分と比べれば、ちゃんと前に進んでいる。比較の軸を「他人の今日」から「自分の去年」に変えるだけで、惨めさは消える。
利益が出て「もう十分」と満足してやめる
これも見落とされがちな脱落理由だ。含み益が20万円くらい出た時点で「もう十分儲かった」と満足して、積立をやめてしまう。
気持ちはわかる。でも早すぎる。新NISAは非課税期間が無期限で、20年・30年という時間軸で設計された制度だ。20万円の含み益で満足するのは、マラソンの3km地点でゴールテープを切るようなものだ。「増えた」と「増え続ける仕組みが要らなくなった」は、まったく別の話。
生活費が上がって積み立てできなくなる
これは意志の弱さの話じゃない。物価上昇や教育費で、単純に積立に回すお金がなくなるケースだ。この場合は、脱落というより撤退に近い。ここだけは責められない。ただし、積立額をゼロにする前に「減額」という選択肢があることは覚えておいていい。月1万でも、ゼロにするよりずっと違う。
まだ2年目の俺がこれをどう防ぐか
積立投資って、長期の航海の途中だ。ここで船を降りるのは筋違いだと思っている。
正直に言えば、キミと同じように、俺も積立額を見て気持ちが揺れた瞬間はあった。それでも1年目の月2万円を、2年目に月3万円へ増やせたのは、目的を先に決めてあったからだ。
飽きそうになったり、比較で心が揺れそうになったら、俺は一度立ち止まって、そもそも何のために資産形成をしているのかを振り返る。これは自分と向き合うことと、実はイコールだ。
一体、なぜNISAという神制度を使ってまで、毎月せっせと積み立てているのか。俺の場合は、老体に鞭打ってまで働きたくないからだ。完全FIREするつもりはない。ただ、60過ぎてまでフルタイムで働くつもりは毛頭ない。今のところ目標金額は3,000万円。そのうえに行っても別に問題はない。
目的が固まっていれば、SNSの月30万勢を見ても揺れない。あの人の航海と、俺の航海は、目的地が違う。同じ船に乗ってるわけじゃない。
「損切りさえしなければ大丈夫」と思っている人がいたら、それは半分しか合っていない。飽きや比較疲れも、暴落と同じくらい静かに船を降ろす力を持っている。むしろ暴落より気づきにくい分、タチが悪い。
積立を一時停止して「様子見」する選択肢もある。でも様子見は、たいてい再開されない。止めた瞬間から、複利の時計も止まる。淡々と積み続けるのと、止めて様子を見るのとでは、20年後の着地点がまったく違う。
成長枠ではS&P500も積んでいるが、現金は常に資産の30%を切らない。この基準は生活防衛資金は何ヶ月分が目安?で決めたラインと同じだ。この土台があるから、暴落でも比較疲れでも、揺れる理由がそもそも少ない。
こういう人はやめてもいい
念のため言っておく。全員が積立を続けるべきだとは思っていない。
- 生活費が本当に足りなくて、積立に回す余力がない——これは撤退であって脱落じゃない。むしろ正しい判断だ。
- NISAを始めた目的がすでに達成されている——たとえば教育資金や住宅資金を貯める目的で、必要額に届いたなら、そこで卒業していい。
- そもそも「20年後に増える」という前提に納得していない——これは投資自体が向いていないサインだ。無理に続ける必要はない。
問題なのは、目的も納得もあるのに、飽きや比較だけでフェードアウトすることだ。
今日やること
- 自分の積立が「損切り」以外の理由(飽き・比較・満足・生活費)でも止まっていないか確認する
- 積立を始めた目的を一文で書き出す。曖昧なら今ここではっきりさせる
- SNSで他人の積立額と比べそうになったら、代わりに1年前の自分の積立額と比べる
- 積立をゼロにする前に、「減額」という選択肢を検討する
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- NISA損切りの落とし穴|枠も複利も消える
── あっちは損切りした場合に消える枠と複利の「制度の話」。今回はそもそも損切り以前に起きている脱落理由の話。 - NISAユーザーよ、その損切りを待て。含み損を抱えて出した俺の結論
── あっちは暴落局面のパニックへの対処。今回は暴落と無関係に、日常の中で静かに起きる脱落の話。
まとめ
新NISAをやめる人の多くは、暴落で心が折れたわけじゃない。飽きた。比較して萎えた。満足した。生活費が上がった。損切りより地味な理由で、静かに船を降りている。
俺はまだ2年目。魔の3年目はこれから来る。でも目的地は決まっている。俺は、未来を当てに行かない。淡々と航路を守る。
確実に増えなければ投資ではなく投棄だ。そして航路を降りた瞬間、増える可能性もゼロになる。
――同じ航路を選んだあんたへ。日々の運用ログはXで発信してる。 → ヨースケのXアカウント @Yosukehochiinve
※本記事は俺個人の見解・体験を綴ったものであり、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。


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