NISA口座が含み損になって、「もう損切り民になった方がいいのか」とスマホを開き直しているなら、売却ボタンを押す前にこの記事を読んでほしい。
ネット上で「NISA損切り民」と呼ばれるのは、NISAで買った株や投資信託が含み損になり、下落局面で売却した人のことだ。売った判断が正しいか間違っているかは、人によって前提が違う。
俺も2025年4月の関税ショックで、NISA口座が普通に含み損になった。怖かった。でも売らなかった。
その後、2026年7月時点では、その口座は含み益+24.2%になっている。
だからといって、NISAで損切りをする人を一律に否定するつもりはない。生活費が足りない、近いうちに使う資金まで投資している、値動きに耐えられず積立そのものをやめそう――そんな場合は、持ち方を見直す方が先だ。
そして本来は、そうした理由で売却を迫られる状態を作らない準備が先にある。生活防衛資金と近いうちに使うお金は、投資と切り離して現金で持つ。投資を続けるための準備も、投資方針の一部だと思っている。
ただし、長期で使う予定のない資金を、広く分散された投資信託で積み立てているだけなら、価格が下がったことだけを理由に売る必要は、俺には見当たらない。
結論:NISAは含み損だけを理由に損切りしない
「NISAで含み損になったら損切りすべきか」——俺の答えはこれだ。
長期目的・生活防衛資金・分散投資の前提が残っているなら、含み損だけを理由にNISAを売らない。
売るかどうかは、「今いくら下がったか」ではなく、最初に決めた前提が壊れたかで判断する。
損切りしたくなる本当の原因は、含み損じゃないかもしれない
「含み損に耐えられない」のではなく、「耐えられない投資額にしてしまった」のかもしれない。
同じ−15%でも、10万円と500万円では見える景色がまるで違う。前者は放っておける。後者は眠れない。下落率は同じなのに。
なら、耐えられなかったのは値動きではなく金額だ。
売却ボタンに手が伸びるとき、その手前にはたいてい別の原因がある。投資額が大きすぎる。生活防衛資金まで投資に回している。数か月で増えるつもりでいた。評価額を一日に何度も開いている。そもそも下がる前提を置いていなかった。円高で海外資産の円換算評価額が下がっているだけ、というケースもある。
どれも「メンタルが弱い」という話じゃない。設計の話だ。
意志で耐えようとする前に、耐えなくて済む金額まで落とせないかを見る。俺はそう考えている。
一括投資の期待値が高くても、自分に合うとは限らない
「一括投資の方が期待値が高い」という説明がある。市場に置いている期間が長い分、理論上はそうなりやすい。この理屈自体を否定するつもりはない。
ただ、期待リターンの最大化と、投資を続けられるかどうかは、別の問題だ。
投資した直後に含み損になると、人は取り返しにいく。手元の貯金を追加で入れて、平均取得単価を下げようとする。ここで投資額が膨らむ。同じ下落率でも、動く金額は大きくなる。評価額を開く回数が増える。仕事中も気になる。そこまで来ると、耐えるための余力はもう残っていない。最後に押すのは、全部売るボタンだ。
理論上正しい方法でも、途中で降りたら、その人の結果にはならない。
俺が積立で買っているのは、期待値の計算に勝ったからじゃない。一括で入れられる資金がなかった、というのが正直なところだ。ただ、月ごとに分けたぶん、下げている最中に判断する回数は少なくて済んだ。
自分が何円までなら平常心でいられるか。期待値の比較より、そっちが先だと思っている。
不安を煽る発信ほど、その先に何が置かれているか見る
「NISA終了」「オルカン暴落」「今すぐ逃げろ」。この手の見出しは、下落局面で必ず増える。不安を刺激する言葉ほど、よく届くからだ。
俺は不安を感じているときほど、その発信者が何を売っているのかを先に確認する。無料の不安の先に、有料の何かが置いてあることがある。
NISA損切り民になる前に確認する5つのこと
1. そのお金は、5年以内に使う予定があるか
家賃、引っ越し、結婚、教育費、車の買い替えなど、近いうちに使う予定の資金まで株式投資に回していたなら、値動きの問題ではなく資金の置き場所の問題だ。
俺なら、必要時期が近い資金は投資枠ではなく現金として先に分ける。売却が必要になってから慌てて資金を作るのではなく、生活防衛資金と特別費を投資と切り離しておく。これが、下落相場でも長期投資を続けるための準備だ。
2. 生活防衛資金を削っていないか
含み損が怖いのは、株価が下がったからだけではない。急な出費や収入減に耐える現金が不足していると、投資を続ける余裕まで失うからだ。
俺は投資とは別に現金比率を維持している。現金があるから、下落時に「今すぐ売らないと生活できない」という状態を避けられる。
投資資金を取り崩さずに済むよう、先に生活防衛資金を分けておく。目安は生活防衛資金は何ヶ月分が目安?にまとめてある。
3. 買った商品そのものの前提が壊れたか
個別株なら、業績悪化、不祥事、配当方針の変更などで見直す場面がある。
一方で、全世界株式やS&P500のような広く分散されたインデックス投信なら、値下がりだけで「投資対象が壊れた」とは言えない。ここを同じ「損切り」で扱わない方がいい。
4. 今の値動きは、自分の許容範囲を超えていないか
毎日株価を見て眠れない、積立を止めたくなる、生活に支障が出る。そうなら、問題は意志の弱さではなく、株式の比率が自分に合っていない可能性がある。
俺なら、売る・売らないの二択にせず、今後の積立額を落とす、現金比率を戻す、投資対象を分散する、といった方法も検討する。
5. 売った後に、いつ・何を・どんな条件で買い直すか決めているか
これを決めずに売ると、下がったところで売り、戻ったところで買い直す形になりやすい。
「不安だから売る」だけなら、俺はアプリを閉じて、判断を1週間延期する。2025年の関税ショックでは、実際に証券口座のアプリをスマホから一時的に消した。
NISAで損切りするとどうなる?3つの注意点
NISAで損切りすべきかを考える前に、実際に損切りすると何が起きるかを整理しておく。
1. 含み損が実現損になる
売却した時点で、含み損は確定した損失になる。
2. NISAの損失は損益通算・繰越控除ができない
NISA口座での損失は、特定口座・一般口座の利益と損益通算できず、繰越控除もできない。課税口座(特定口座・一般口座)の上場株式等の損失であれば、一定の要件を満たして確定申告をすれば繰越控除を利用できることがあるが、NISAにはその救済がない。
3. 売却した年の年間投資枠は戻らない
新しいNISAでは、売却した商品の取得額(簿価)ぶんの非課税保有限度額を、翌年以降に再利用できる。
ただし、売った年の年間投資枠にその分が上乗せされるわけではない。売却してから同じ年に買い直して、枠を元に戻すことはできない。
制度上の不利だけで売却を止めるべきだとは言わない。ただ、「怖いから一度売って、落ち着いたら同じ年に買い戻す」という作戦は、枠の使い方としても考えにくい。
制度の細部は、金融庁のNISA FAQで確認してほしい。
NISAで損切りすると何を失うのかは、NISA損切りの落とし穴|枠も複利も消えるで制度面だけ別記事に整理した。
俺が関税ショックで売らなかった理由
2025年4月、関税ショックで相場が急落した。口座の数字を見るたびに、「いっそ売って現金に戻した方が安全じゃないか」と考えた。
でも、俺の生活防衛資金は別にあり、積み立てていたのは長期で使う予定のない資金だった。投資対象も、世界経済全体に分散された投資信託が中心だ。
この前提が残っているのに、価格だけを理由に売るのは、自分で決めた方針を相場に明け渡すことだと思った。
だから、売らずに積立設定も変えなかった。
実際に含み損−19%でも積立を止めなかったときの記録は含み損19%でも積立を止めなかった理由——「今売る根拠」がなかった、それだけだに残している。
円高でオルカンを売りたくなった場合は、別の論点がある
「含み損だから売りたい」ではなく、「円高でオルカンが下がったから売りたい」という不安なら、為替と積立の話も切り分けた方がいい。株価が下がったのか、円が高くなったのか。損益画面の赤字は同じでも、中身は別物だ。
保有分を売るかどうかで迷っているなら、円高でオルカンを損切り?NISAを売る前に確認したい5つのことで判断軸を整理した。積立を続けるかどうかで迷っているなら、円高でオルカン積立は続ける?「安く買える」の罠で積立判断を整理している。
よくある質問
Q. 「NISA損切り民」とは?
新NISAで買った投資信託や株が含み損になり、耐えきれずに売却した人を指すネットスラング。SNSでは「新NISA損切り民」とも書かれる。制度そのものへの批判というより、下落局面で売ってしまった人への自嘲・揶揄として使われることが多い。
Q. NISAで損切りした人はいますか?
NISAでも、含み損になったところで売却する人はいる。ただ重要なのは、他人が売ったかどうかではなく、自分の投資の前提——長期目的・生活防衛資金・分散投資——が崩れているかどうかだ。
Q. NISA損切り民は後悔しますか?
断定はできない。その後相場が戻れば後悔することもあるし、生活資金が必要で売った場合は合理的な判断だったとも言える。重要なのは「後悔するか」より、売却理由を自分で説明できるかどうかだ。
Q. NISAで含み損になったら損切りすべきですか?
含み損になったという理由だけで売る必要はない。判断するのは、投資目的・保有理由・資産配分が崩れているかどうかだ。個別株なら業績悪化や不祥事など、買った商品そのものの前提が壊れたときは見直す場面がある。一方、全世界株式やS&P500のような広く分散されたインデックス投信は、値下がりだけで「投資対象が壊れた」とは言えない。
Q. NISAで損切りするとどうなりますか?
含み損が確定して実現損になり、NISAの損失は損益通算・繰越控除ができない。さらに、売却した年の年間投資枠は戻らず、簿価分の非課税保有限度額が使えるのは翌年以降になる。
Q. NISAの損失は損益通算できる?
できない。NISA口座での損失は、特定口座・一般口座の利益と損益通算できず、繰越控除もできない。ここが課税口座での損切りとの決定的な違いだ。
まとめ
- NISA損切り民になる前に、価格ではなく前提の崩れを確認する
- 耐えられないのは含み損ではなく、投資額の方かもしれない
- 一括投資の期待値の高さと、自分がその方法を続けられるかは別の問題
- 近く使う資金や生活防衛資金まで投資しているなら、資産配分を見直す
- 損切りすると含み損が確定し、NISAの損失は損益通算・繰越控除もできない
- 新しいNISAの売却枠は翌年以降に再利用できるが、売った年の枠は増えない
- 分散された長期投資で、価格下落だけが理由なら、俺はすぐ売らない
- 売るなら、買い直す条件まで先に決める
この記事は俺の体験と考え方を整理したものだ。投資判断は、収入・生活費・資産配分・使う予定の時期によって変わる。最終判断は自分で行ってほしい。


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