NISAは何歳から始めるべきか——20代の買付急増を伝えるニュースを見て、そう考えた人も多いはずだ。
金融庁のまとめによると、20代のNISA買付額は2025年に1兆2648億円となり、制度開始時の2014年と比べ約17倍に増加した。若い世代ほど物価高や年金への不安を感じやすく、その不安が投資へと向かっている。
出典:Yahoo!ニュース(共同通信配信)「20代のNISA買い付け17倍 制度開始の14年比、将来に備え」(取得日:2026-08-21) https://news.yahoo.co.jp/articles/e7789e64aae0e83b19225e0b46a378cd5cf7974a
こういうニュースを見ると、30代・40代・50代の方なら、こう感じるかもしれません。「若いうちに始めた人が勝つ。自分はもう出遅れた」と。
正直、その感覚は分かる。複利は時間の関数だ。早く始めた方が有利なのは事実で、そこに嘘はない。
でも結論を先に言う。**遅すぎる年齢は存在しない。**理由は、投資で差がつくのは「開始年齢」より「続けられる形になっているか」だからだ。
なぜ俺は「何歳から」を気にしなくていいと考えるのか
20代の買付急増は、若い世代の危機感の表れであって、他の世代への締切通知じゃない。
金融庁の調査では、2025年12月末時点でNISA口座数は2,821万、制度開始からの累計買付額は71兆円に達した。NISAは一部の若者だけが利用する制度ではなく、幅広い世代に利用される制度になっている。
出典:金融庁「NISA口座の利用状況に関する調査結果(令和7年12月末時点)」(取得日:2026-08-21) https://www.fsa.go.jp/policy/nisa/20260703.html
だったら「何歳から始めるべきか」より、「自分は今の年齢で、どう向き合うべきか」を考える方が実用的だ。
20代のNISA利用は増えている。でも資産形成に遅すぎる年齢はない
20代の買付額が17倍に伸びたという数字は、確かにインパクトがある。ただ、この数字だけを見て「若者の独壇場」と捉えるのは早計だ。
同じ金融庁のまとめでは、30代の買付額も2025年に3兆2866億円と、2014年比で約14倍に拡大している。伸び率で見れば20代が最大だが、30代もほぼ同じ勢いで積み上がっている。
税制調査会に提出された資料でも、つみたて投資枠を1回以上利用した人の割合は20代以下が91.6%と全世代で最も高い一方、50代以下のどの世代も80%を超えている。
出典:税制調査会「NISAの効果検証」(取得日:2026-08-21) https://www.cao.go.jp/zei-cho/content/7ebpm5kai2.pdf
ここで見るべきは「20代がどれだけ伸びたか」じゃない。「40代・50代も、すでに8割以上が積み立てを始めている」という事実の方だ。40代からこれを始めようとしていても、周回遅れではない。同じ集団の中にいる。
年代別に見る資産形成との向き合い方
とはいえ、年代によって置かれている状況は違う。同じ「NISAを続ける」でも、意味合いが変わる。
| 年代 | 特徴 | 投資との向き合い方 |
|---|---|---|
| 20代 | 収入は少なめだが、時間という最大の武器がある | 少額でも長期継続すること自体が強みになる |
| 30代 | 結婚・住宅・教育など生活イベントが増える時期 | 投資額の大小より、家計とのバランスを優先する |
| 40代 | 老後を意識し始める。住宅ローンや教育費が重なる人もいる | 焦って増額するより、継続と家計改善を重視する |
| 50代 | 収入はピークに近づくが、退職も視野に入る | 増やす視点だけでなく、取り崩し方まで含めた出口を考え始める |
40代を「教育費と住宅ローンで苦しい年代」と一括りにするつもりはない。子どもがいない人もいれば、ローンをすでに完済している人もいる。ここで言いたいのは、年代が変われば、正解の投資額も変わるということだけだ。20代の少額積立と、50代の出口戦略は、同じ土俵で比べるものじゃない。
「NISA貧乏」にならないために大切なこと
投資への関心が高まる一方で、「NISA貧乏」という言葉が国会でも取り上げられた。2026年3月、衆議院財務金融委員会で野党議員がこの言葉を財務相にぶつけ、財務相が「意図していない」「ショックを受けた」と答弁している。
出典:東京スポーツ「衆院委でNISA貧乏取り上げ」(取得日:2026-08-21) https://www.tokyo-sports.co.jp/articles/-/380427
はっきりさせておきたいのは、問題はNISAという制度じゃないということだ。非課税で長期投資できる箱そのものは、よくできた仕組みだ。問題が起きるとすれば、それは「周りが積み立てているから自分も」と、生活費や緊急資金を削ってまで投資額を積み増したときだけだ。
生活防衛資金は、金融庁が明確な月数基準を示しているわけではない。ただ一般的には、生活費の3〜6か月分を投資とは別に確保しておく、という目安が広く言われている。この土台がないまま相場が下がると、生活費を確保するために一番悪いタイミングで売る羽目になる。それこそが本当の「NISA貧乏」だ。
「今から始めても、20代の伸びには追いつけないんじゃないか」——そう思うなら、そもそも他人と伸び率を競う必要がない。比べる相手は、20代の買付額でも、隣の家計でもない。数年前の自分自身だ。
投資額を増やすことより、続けられる環境を作る
俺自身、本格的に資産形成を始めたのは30代後半になってからだ。早いスタートだったとは言えない。
それでも、生活防衛資金をゼロから全部貯め終えてから投資を始めたわけじゃない。無理のない金額で積立を始めながら、生活防衛資金も並行して積み増してきた。
今は生活防衛資金として約219万円、給与の12.7か月分まで積み上がっている。NISAつみたて枠でオルカンに月3万円、成長投資枠でS&P500に月1万円を積み立てていて、こちらは2025年に始めたばかりでまだ1年強だ。金額としては大きくない。
この金額や年齢が正解というわけじゃない。無理なく続けられる状態を作った、その一例にすぎない。それでも止めていないのは、生活が崩れない範囲に収めているからだ。
投資額の大きさと、資産形成の成否は別の話だ。月1万円でも20年続けられる人と、月10万円で3か月やめる人なら、前者の方が最終的な資産は積み上がる。続けられる設計になっているかどうかが、金額の大小より効いてくる。
NISAは目的じゃない。非課税というメリットを持った箱にすぎない。何のために、いつまでに、いくら必要かという自分の人生設計が先にあって、NISAはそれを実現する手段の一つでしかない。生活防衛資金の作り方については、以前まとめている。まだ確保できていない人は先にそちらを固めてほしい。
関連記事: 生活防衛資金の目安はこれだけ
投資で大切なのは、誰かと比べて早く・大きく始めることじゃない。自分の生活を守りながら、将来の選択肢を増やしていくことだ。
20代から始めた方も、50代から始める方も、やることは同じだ。無理のない額で、止めずに続ける。それだけでいい。
※本記事は俺個人の見解・体験を綴ったものであり、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。


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