2026年7月21日、円相場が一時1ドル163円台をつけた。約40年ぶりの円安水準だ。
(参考:楽天証券トウシル「163円をじわり突破したドル円相場。さらなる円安を引き起こすかもしれない『7月末のビッグイベント』とは」 2026年7月22日)
こうなると、決まって出てくる言葉がある。「今から外貨建てを買うのは高値掴みだろ」。
正直、この気持ちは分かる。俺も140円台の頃に「さすがに戻るだろう」と思っていた側だ。だが結論を先に言う。俺は163円でもオルカンの積立をやめない。理由は3つある。
そしてもう一つ、この記事で本当に言いたいことがある。円預金しか持っていない状態は「様子見」ではない。円という1つの通貨に、全額を賭けている状態だ。
なぜ俺は1ドル163円でもオルカンの積立をやめないのか
高値掴みが怖い、という感覚の前提には「今が高い」という判断がある。でもその判断は、3年前も、2年前も、去年も外れ続けてきた。
140円の時は150円になると思われていなかった。150円の時も「160円だけはない」という空気だった。そして今、163円だ。
俺が積立をやめないのは、円安が続くと予想しているからじゃない。為替の向きは選べないが、自分の資産をどの通貨に置くかは選べるからだ。ここから、理由を3つ並べる。
理由1:円預金は「減らない」んじゃない。減っているのが見えないだけだ
総務省統計局の最新データを見てほしい。2026年6月の全国消費者物価指数(総合)は、2020年を100として113.6。前年同月比で1.7%の上昇だ。
(参考:総務省統計局「消費者物価指数(CPI)全国 最新の月次結果の概要」 2026年7月24日公表)
つまり5年半で13.6%、モノの値段が上がった。同じ100万円で買えるものが、1割以上減ったということだ。
一方で、普通預金の金利は上がったといっても1%に届かない。物価が1.7%上がる横で0.数%しか増えない預金は、毎年ほぼ確実に負ける勝負に参加しているのと同じだ。
通帳の数字は1円も減らない。減っているのは数字じゃなく、その数字で買える量のほうだ。ここが厄介で、減っている実感がまったく湧かない。
俺が「現金は安全」という言葉を信じなくなったのは、この非対称性に気づいた時だった。
理由2:君の資産は円の一点賭けだ|給料も年金も、たいてい同じ通貨に乗っている
ここが今日の本題だ。
投資をしている人でも、意外と抜けている視点がある。通貨で見た時の集中度だ。
チェックしてみてほしい。
- 毎月の給料 → 円
- 銀行の預金 → 円
- 将来もらう年金 → 円
- 持ち家があるなら、土地と建物 → 円建て資産
- NISAで日本株だけ買っているなら、それも → 円
全部が同じ通貨に乗っている。これは分散じゃない。円という1銘柄への集中投資だ。
円の価値が下がると、資産も、労働の値段も、将来の受取額も、まとめて薄まる。そのくせ物価だけは上がる。3方向から同時に殴られる構造になっている。
外貨建て資産を持つのは、リスクを取りに行く行為じゃない。片側に寄っていた賭け金を、半分だけ反対側に戻す行為だ。
じゃあ、どうやって戻すのか。俺がオルカンとS&P500を選んだ理由が、まさにここにある。
投資を始める前から「円以外の資産も持っておきたい」とは思っていた。ただ、その手段を知らなかった。外貨預金は手数料が高そうだし、ドルを直接買うのも生活に馴染まない。何をどこで買えばいいのかが分からないまま、口座に円だけが積み上がっていった。
答えは拍子抜けするほど単純だった。投資信託を買えば、間接的に外貨建て資産を持てる。オルカンもS&P500も、中身は円ではない。証券口座で毎月自動で買われていくだけで、通貨の分散は勝手に進む。
つまり俺にとってのオルカンは、リターンを狙う道具である前に、円の一点賭けを崩すための一番手軽な手段だった。
理由3:163円で買っても、5年持てば128円まで円高に耐えられる
「それでも163円で買うのは怖い」——ここに数字で答える。
損益分岐となる為替レートを計算してみる。1ドル163円の時に100ドル分を買うと、支払いは16,300円。この100ドルが年5%で回ったとして、将来の円換算がいくらの為替レートでトントンになるかを出す。
| 保有期間 | 100ドルの成長後 | 損益分岐となる為替レート |
|---|---|---|
| 5年後 | 約127.6ドル | 約128円 |
| 10年後 | 約162.9ドル | 約100円 |
| 20年後 | 約265.3ドル | 約61円 |
5年持てば、1ドル128円まで円高が進んで、ようやく元本と同じ。10年なら100円、20年なら61円だ。
128円は数年前まで普通にあった水準だが、そこまで戻って初めてトントンなら、高値掴みの恐怖はだいぶ違って見える。運用で増えたドルそのものが、円高の目減りを吸収してくれるからだ。
もちろん毎年きれいに5%で回る保証はない。年率を落とせば分岐点は上がる。それでも、時間が味方することは変わらない。
ここで、読者が持つ最強の反論を先に潰しておく。「円高が来たら立場は逆転するだろ」——その通りだ。ただ、そのセリフは3年前から言われ続けて、3年間外れている。2023年に「年末には120円台」と断言していた専門家もいた。方向は語れても、タイミングは誰にも読めない。読めるならFXで完結する話だ。
だから俺は当てに行かない。当てなくても成立する形にする。それが毎月同じ額を買い続けるという方法だ。163円の月も、158円の月も、全部まとめて平均点にする。高値掴みは1点で買うから起きる。時間を散らせば、掴む値段も散る。
国は210兆円の外貨を持っている|円安側に先に立っているのは国だ
あまり知られていない事実を1つ置いておく。
日本政府の外貨準備は、2025年末時点で1兆3,697億ドル(約210兆円)。そして外国為替資金特別会計は、2024年度決算で資産から負債を引いた額が約80兆円に上り、うち約50兆円が為替差益による含み益だ。
(参考:時事ドットコム「外為特会は『埋蔵金』か 消費減税の財源活用論で注目」 2026年2月3日)
昔の円高時代にドルを買った分が、今の円安で膨らんでいる。要するに、個人が新NISAでやっていることを、国は兆単位で先にやっている。
同じ国が、今年の4月28日から5月27日にかけて11兆7,349億円の円買い介入を実施した。円安局面としては過去最大の規模だ。それでも163円まで来た。
(参考:三井住友DSアセットマネジメント「11.7兆円規模となった2026年4月〜5月の為替介入の効果を考える」)
介入で時間は稼げる。だが流れそのものは変えられない。国が11兆円かけても止まらないものを、個人が「そのうち戻るだろう」と待って耐えるのは、無理筋だと俺は思う。
こういうときは円のままでいい
一般化するつもりはない。円で持っておくべき場面は確実にある。
- 3年以内に使う予定が決まっているとき(住宅頭金・教育費・車の買い替え)。為替で2割動く器に、期限のある金は入れない
- 生活防衛資金がまだ積み上がっていないとき。俺は90万円を円の現金で確保してから外側に回した。順番を逆にしない
- 評価額の上下で手が動いてしまうとき。月に5%動いて夜眠れないなら、比率が自分に合っていない。減らすのは負けじゃない
外貨全振りも間違いだ。円高に戻れば評価額は減るが、その時は輸入品が安くなって生活側が楽になる。どっちに転んでも致命傷にならない形を作るのが目的であって、円安に賭けて勝つことが目的じゃない。
ただ、覚悟しておくことが1つある。円高と株安が同じ月に来ると、評価額は一気に削られる。始めた直後にそれを食らうと、人は普通に心が折れる。そういう月は必ず来る。来ると分かって始めるかどうかで、握力はまるで変わる。
俺の現状を出しておくと、生活防衛資金を含めた現金は生活費12.7ヶ月分。その外側は、オルカンとS&P500で外貨建てに寄せている。積立は2025年開始で、2026年8月分から月3万円を4万円に増額する。
今日やること
- 自分の資産を「円建て」「外貨建て」の2列に分けて書き出す。持ち家と将来の年金も円の欄に入れる
- 円の欄が9割を超えていたら、それは分散ではなく一点賭けだと認識する
- 3年以内に使う予定の金額を確定させ、そこは円の現金で確保する
- 買う手段が分からないなら、外貨預金やドル直接ではなく投資信託から入る。オルカン1本で中身は外貨建てになる
- 残りについて、月1万円でいいので時間分散の入口を作る。163円で一括投入する必要はどこにもない
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まとめ
1ドル163円が高いのは事実だ。でもそれは「買わない理由」であって、「円だけで持ち続ける理由」にはならない。
円安が来るかどうかは選べなかった。だが来た時にどちら側に立っているかは、選べた。そしてその選択は、今からでもやり直せる。
資産は世界に、身は日本に。俺は、未来を当てに行かない。淡々と航路を守る。
――同じ航路を選んだあんたへ。日々の運用ログはXで発信してる。 → ヨースケのXアカウント @Yosukehochiinve
※本記事は個人の投資判断と経験の記録であり、特定の金融商品の推奨や投資助言を目的としたものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。


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