親の家は「放置していい資産」じゃない。父の家を10ヶ月で売った俺の結論

古びていく空き家と育っていく積立資産を天秤にかけて見比べる投資家のイラスト 投資マインド
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「実家を相続するつもりはない」──親が持ち家の働く世代300人に聞いた調査で、43.33%がそう答えている(相続弁護士相談広場・2024年8月調査)。ほぼ2人に1人だ。いらない。でも、親が生きているうちに家の話なんてできない。だから考えないことにする。俺もそうだった。

先に正直に書いておく。俺が売ったのは「実家」じゃない。父が家族に内緒で買っていた、俺が一度も住んだことのない家だ。君の実家問題とは少しずれる。ただ、思い出がゼロだったからこそ、俺はあの家を純粋に「資産」として見ることができた。そして資産として見た結論がこれだ。

オルカンは放置が正解。親の家は放置が毒。 同じ「ほったらかし」でも、資産の性質で答えは真逆になる。


なぜ親の家は「放置」で毒になるのか

俺は放置系投資家だ。オルカンを毎月積み立てて、暴落が来ても設定を触らない。それで資産は育ってきた。だから最初、父の家にも同じ感覚でいた。急がなくていいだろう、と。

これが間違いだった。

インデックスファンドは、放置している間に市場が勝手に働く。暴落しても、待てば回復してきた歴史がある。日経が暴落した日も俺が何もしなかったのは、その構造を信じているからだ。

親の家は逆に動く。放置している間に、築年数は増える。建物の価値は減る。固定資産税と維持費は出ていく。買い手のローン金利は上がっていく。そして持ち主である親の判断能力は、いつまでもあるとは限らない。時間が味方につく資産と、時間が敵に回る資産。親の家は後者だ。

だから積立は続けろ、家は動け、が俺の結論になる。オルカンを淡々と買い続ける理由は別の記事に書いた。この記事では、動かなかった俺がどう動いたかを書く。


任せて半年動かなかった。分岐点は「決めるのは父、動くのは俺」

2025年、父が脳梗塞で倒れた。その後始末の中で、4月に発覚した。千葉県市原市に、父名義の5LDKの戸建てがあった。母との移住のために内緒で買っていたらしい。移住は実現しないまま、母は2023年に他界していた。

最初、売却は父本人に任せた。父の家だ、父が決めて父が動くのが筋だと思った。結果、4月から9月までの半年間、ほぼゼロ進捗。悪気はない。病み上がりの70代が、査定を取り、業者を比較し、契約を進める。そのエネルギーがもう残っていなかっただけだ。

親の資産に子が口を出すべきか。俺は普段、親の資産運用には口を出すなと書いている立場だ。生きてる資産、つまり運用は親の人生の采配で、子の出る幕じゃない。でも空き家は違った。誰の人生も豊かにしないまま、コストだけが流れていく。

そこで役割を割った。決めるのは父、動くのは俺。 売る・売らない、いくらなら手放すか──その判断は全部父から取る。査定の手配、業者との面談、書類集め──手足は全部俺がやる。この分担にした瞬間、半年止まっていた話が動き出した。

2025年10月に一括査定を出したら6社から反応があり、11月に3社と面談。相場より明らかに高い査定を出してくる業者もいた。高値で専任契約を取って、後からじわじわ値下げさせる手口を警戒して、そこは切った。決め手は一番現実的な売値を提示してきた地元業者。専任媒介で任せた。

2026年1月に売り出して、2月に成約・引渡し。売り出しから約1ヶ月だ。半年動かなかった案件が、役割を割ったら4ヶ月で終わった。


「売れるうちに売る」。金利と築年数は待ってくれない

「もう少し待てば高く売れるかも」。売却のタイミングを考え始めた人が必ず一度は通るやつだ。俺も考えた。でも数字を見て捨てた。

まず金利。日銀の政策金利は2026年6月の会合で0.75%から1.00%に上がった。フラット35の金利は2026年4月の2.49%から7月には3.14%へ、3ヶ月で約0.65pt上昇している。家を買う側のローン負担がそれだけ重くなったということだ。買い手の予算が縮めば、買い手の数が減る。売り手が「待つ」ほど、市場の向こう側が痩せていく。

次に築年数。待っている間も建物は古くなり続ける。うちの場合、引渡し前に給湯器が凍結で壊れているのが見つかって、価格交渉に応じた。売出価格から数%下げての成約だ。空き家は住んでいないだけで傷む。次の冬まで持っていたら、壊れる場所は増えていただろう。

そして税金。住宅用地は特例で固定資産税の課税標準が1/6に軽減されている(200㎡以下の部分)。逆に言えば、管理されない「特定空家等」に指定されて勧告を受けると、この特例から外れる。1/6の裏返しだから、単純計算で最大6倍相当の負担になりうる──これは俺が特例の仕組みから逆算した話で、「6倍になる」と国が明記しているわけじゃない。ただ、軽減で成り立っていた税額が素に戻る、その構造は事実だ。

背景の数字も置いておく。全国の空き家は900万2千戸、空き家率13.8%で過去最多(総務省・令和5年住宅・土地統計調査)。売りたい家は増え続けている。競合が増える市場で「高くなるまで待つ」は、戦略じゃなくて先送りだ。


売却金の行き先。半分は父の運用、半分は介護と生活のバッファ

売れて終わり、じゃない。売却で痛感したことを2つ書いておく。

ひとつは、コストの現実。仲介手数料、司法書士費用、譲渡にかかる税金もろもろで、売却額のおおむね1割弱が諸費用で消えた。しかもうちは誰も住んでいなかった家だから、譲渡所得の3,000万円特別控除は対象外。「実家を売れば非課税になるらしい」と聞きかじっていた君、あれは居住などの条件付きだ。親の家がその条件に乗るかは、売る前に確認したほうがいい。

ちなみに権利証は紛失していた。これは司法書士の本人確認手続きで代替できた。書類がないから売れない、は思い込みだった。

もうひとつは、金の置き場所。売却金は半分を父の運用に、半分を介護費用と生活費のバッファに分けた。家という凍った資産が、父の老後を支える動く金に変わった。空き家のままなら、税金を食いながらただ古くなるだけだった塊がだ。維持し続ける固定費と、現金化して運用に回すリターン。並べれば答えは明白だった。

そして一番大事なこと。親の意思確認は、本人にしかできない。 売る・売らないを決められるのは名義人である親だけだ。判断能力が落ちてからでは、成年後見などの手続きが挟まり、ハードルは一段も二段も上がる。うちは父が自分で「売る」と言える状態だったから10ヶ月で終わった。それが何よりの幸運だったと、終わってから気づいた。


こういう人は急がなくてもいい

全員が今すぐ売れ、という話じゃない。

  • 親がまだその家に住んでいて、生活が回っている
  • 立地が強く、賃貸や親族の利用など具体的な活用予定がある
  • 親自身が管理を続けられていて、家が傷んでいない

こういう状況なら、急ぐ理由はない。俺が言っているのは「誰も住まず、管理もされず、これからも使う予定のない家」の話だ。それを「そのうち考える」の棚に置くのが毒だ、ということ。


今日やること

  • 帰省の予定に「親の家の話をする時間」を組み込む
  • 親の家の名義・築年数・権利証のありかを、雑談レベルで聞いてみる
  • 「売る・売らない」を迫らない。「この家、将来どうしたい?」と親の希望を聞くところから
  • 固定資産税の納税通知書を親と一緒に眺めてみる(毎年いくら出ているかの共有だけでいい)

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まとめ

「実家を相続するつもりはない」が43.33%。でも、いらないと思うことと、放置していいことは別だ。金融資産は放置で育つ。親の家は放置で腐る。同じ「ほったらかし」に見えて、中身は真逆だ。

そして親の家は、親が元気なうちしか動かせない。決められるのは親だけで、その時間には期限がある。夏の帰省は、親と家の話ができる年に数回しかない機会だ。切り出しにくいのはわかる。俺も10ヶ月前まで、父の家の存在すら知らなかった。

放置していい金は、放置しろ。放置できない家は、今年の夏に話せ。


※本記事は俺の実体験に基づく個人の見解です。不動産の売却・税務(3,000万円特別控除の適用可否など)は個別の条件で結論が変わります。実行前に税理士・不動産の専門家に確認してください。

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