親の資産運用に口を出すな。代わりに俺ならこうする3つのこと

閉じた扉の前で静かに待つ子のシルエットと、扉の向こうの投資信託の書類のイラスト 投資マインド
この記事は約8分で読めます。

「親が証券会社で勧められた投資信託、調べてみたら手数料が年3%超え。乗り換えさせたいのに、聞く耳を持ってくれない——」

こないだSNSで、こんな書き込みを見かけた。母の遺産を父が引き継いで運用してて、信託報酬が3%超え。子としては心配だけど、父は聞く耳を持たない。「これって放置するしかないんですかね」と。

わかる。めっちゃわかる。

実は俺も、何年か前に親の口座をちらっと覗いたことがある。アクティブファンドと毎月分配型ファンドが堂々と並んでた。心の中で「これはダメだろ」って即ツッコんだ。

でも、結局俺は何も言わなかった。

なんで言えなかったのか、言わなかった俺は今どう思ってるのか。ここから書く話は、その答え合わせでもある。先に結論から言うわ。

親の金は、親のもの。俺たちにできるのは3つだけある。

口を出して説得するんじゃない。代わりに俺がやるなら、こうするって話を書く。


親の口座が”年3万円ずつ消える設計”になっていた話

まず、なんで親の口座の話で子が焦るのか。手数料の話からいくわ。

「信託報酬」って言葉、聞いたことある?投資信託を持ってる間、毎年自動で引かれる手数料のこと。1%とか0.1%とか、商品によって全然違う。

例えば、対面の証券会社(日興、野村、大和あたり)で売れ筋の アライアンス・バーンスタイン米国成長株投信Dコース っていうファンド。信託報酬は年 3.41%。(運用会社公式)

これがどれだけヤバいか、表で見せるね。

ファンド信託報酬(年率)100万円・年5%・20年運用後
eMAXIS Slim 全世界株式(オルカン)0.05775%約262万円
AB米国成長株投信Dコース3.41%約144万円

※購入時手数料3.3%・税抜計算・配当再投資・市場リターンは同じ前提

同じ100万円。同じ20年。同じ市場リターン。それでも残高は約118万円ズレる。

オルカンと比べると、信託報酬は 約59倍だ。年3%の信託報酬って、要するに毎年確定で3%のマイナスリターン。市場が10%上がっても、君の手元に残るのは7%だけ。市場が動かなきゃ、毎年3%ずつ確実に資産が削られていく。

これを20年続けたらどうなるか。親の口座は”年3万円ずつ消える設計”になってるってわけ。

これ知ったら、子としては言いたくなるでしょ。「お父さん、それやめてオルカンにしようよ」って。

でもな、ここで一回ストップ。さっきも言ったけど、俺はこれを知ってて何も言わなかった。なんでか。次でそれを書く。


それでも親が動かない本当の理由は”お金”じゃない

数字を見せれば親が動く——なら誰も苦労しないんだよ。動かないのは、親が払ってるのが手数料じゃないから

親が払ってるのは、3つのもの。

1つ目:「子のために運用してる」っていう善意

実家の解体費を子に負担させたくない、相続税で困らせたくない。そう思って親は運用してる。商品の良し悪しの話じゃなくて、親としての最後の仕事としてやってる。ここを「手数料で食われてるよ」って言葉で否定すると、商品批判じゃなく、人格否定として届く。

2つ目:対面営業マンへの信頼

銀行の窓口や証券会社の営業マンは、親にとって「お金の相談ができる人」。10年20年の付き合いだったりする。証券会社の窓口が薦める=証券会社が儲かる、ってのは俺たちには常識だけど、親世代にとって窓口の人は「家族ぐるみの相談相手」だ。子が「あれぼったくりだよ」って言うってことは、親からすると「お前は人を見る目がない」って言われたのと同じなんだよね。

3つ目:自分の判断は間違ってなかったっていうプライド

行動経済学に「サンクコスト効果」「現状維持バイアス」って話がある。(三菱UFJ銀行の解説)もう払った手数料、もう過ぎた時間を無駄にしたくない、変化したくない、っていう心理だ。高コスト投信を長く持ってる親ほど、抜けられない。だって乗り換えるってことは、「今までが間違いだった」って認めることになるじゃん。

しかもな、人間には「説得されればされるほど逆方向に動く」って性質がある。子に「やめろ」と言われるほど、親は意地でも続けるんだよ。

つまり、数字で殴れば殴るほど、親は遠ざかる。正論バットを振った瞬間、商品も家族関係も両方失う。これだけは覚えといて。

俺が何年か前に口を閉じたのも、この3つを直感的に感じたからだ。「お父さんそれぼったくりだよ」って言葉が喉まで出かかって、飲み込んだ。今振り返ると、あの時飲み込んで正解だったと思ってる。


そもそも”60代の運用”と”30代の運用”は別ゲーム

ここでもう1個、子側が見落としがちな話をする。

「親もオルカン一本にしろよ」——これ、実はけっこう乱暴な助言だったりするんだよね。だって、30代の運用と60代の運用はそもそも別ゲームだから。

観点30代(積み立てる側)60代(取り崩す側)
給料収入大きい(残り30年分)ほぼゼロ
キャッシュフロー入金 > 支出年金+取り崩し
暴落が来た時安く買える好機残高直撃・回復を待てない
時間軸20〜30年5〜25年(健康寿命)
必要な株式比率80〜100%でも可30〜50%が定説

特に大きいのが「シーケンスリスク」っていう話。(大和総研の解説)

同じ平均リターンでも、暴落が「取り崩し初期」に来るか「後期」に来るかで最終残高がガラッと変わるって話。30代なら暴落が来ても「安く買えてラッキー」で済む。でも60代の取り崩し中に暴落食らうと、減った資産から取り崩すから回復が間に合わない。

だから60代の親には3層管理が定説になってる。

  • 2〜3年分の生活費 → 現金・普通預金
  • 5〜10年分 → 個人向け国債とか安全資産
  • 残り → 株式とか成長資産

それともう1個忘れがちなのが、含み益のある投信を急いで売ると、約20%(20.315%)の税金がかかるって話。(国税庁:株式・配当・利子と税)長く持ってた高コスト投信ほど含み益が乗ってる可能性が高くて、乗り換えメリットが税金で消えるケースもある。

つまり、子が「オルカンに乗り換えろ」って言ってる助言、親のフェーズには合ってない可能性すらあるんだよ。子の正義が、親の最適解とは限らない。


それでも黙ってられない俺たちへの3つの処方箋

「わかった、説得しても逆効果なのも、フェーズが違うのもわかった。でもさ、なんかしたいんだよ」——わかる。俺だってそう思う。

そこで俺が参考にするのは、臨床心理の世界で確立されてる「動機づけ面接」っていう手法だ。(参考)

元はアルコール依存の治療法。「説得・議論・助言を避けて、本人の中にある変化への動機を、質問と傾聴で引き出す」やつ。原則はシンプルで、共感する、矛盾は本人に気づかせる、抵抗に逆らわない、本人の自信を支える、の4つ。

これを親の資産運用問題に翻訳すると、俺がやるならこの3つだ。

① 数字を見せる、でも判断は親に委ねる

親の投資信託の信託報酬の話、含み益と税金の話、紙1枚にまとめて机に置いとく。それだけ。
読むかどうかも、動くかどうかも、親に任せる。「読んでね」も言わない。情報だけ渡して、所有権は手放す

② いつ使う金か、聞いてみる

「お父さん、その口座のお金、いつ何に使う予定なの?」って聞く。それだけ。
親が自分で「実家の解体費」「相続税」って口にした瞬間、5〜10年で使う金を株式で運用してる矛盾を、親が自分で発見する。子が指摘するんじゃなくて、親が自分で気づく構造を作るんだよ。

③ 自分の口座を黙って見せる

「俺はこういう運用してる」って、自分のSBIの画面とか積立履歴を見せる。説得じゃなくて、ただの事例提示。
親が興味持ったら話す。持たなきゃそれで終わり。ちなみに俺は2025年からオルカンを月3万、新NISAつみたて枠で積み立ててる。1年弱で投じた額は40万弱。これがどう転がるか、5年後10年後の数字を一緒に追ってもらう方が、論破よりよっぽど効くんだよね。

この3つの共通点は何かっていうと、親に変える自由と、変えない自由の両方を渡してるってこと。説得しないからこそ、初めて変える余地が生まれる。逆説的だけどな。


それでも親が動かないなら、放置でいい

3つやって、それでも親が動かなかったら——放置でいい。これは敗北じゃないんだよ。合理的判断だ。

理由は3つある。

1つ目:親の口座は、親のもの

お金の所有権は親にある。法律の話以前に、人として尊重すべき領域だろ。子の正義で土足で踏み込んでいい場所じゃない。

2つ目:説得コスト > 乗り換えメリットになることがある

さっき書いた含み益課税の話もそう。それに加えて、親を説得する精神的コスト、家族関係が悪化する潜在的損失。これを金額換算したら、信託報酬の差を上回ることが普通にある。

3つ目:自分の積立を増やす方が、家族トータルでは早い

親の100万円の運用先を変えるより、自分の積立額を月1万円増やすほうが、家族全体の資産形成は早かったりするんだよ。親の戦場じゃなく、自分の戦場で戦う


放置系投資家として、俺はずっと言ってる。「触らない」「見ない」「焦らない」がインデックス投資の最強戦略だ、ってな。

これな、自分の口座だけの話じゃないんだよ。親の口座にも、まんま当てはまる

口を出さない、説得しない、扉だけ開けておく。それが、子としてできる一番誠実な”放置”だと俺は思ってる。

…で、これは余談だけど。あの時アクティブファンドに口を閉じた俺の親は、その後ぜんぜん別のタイミングで自分から「ちょっと聞きたいんだけど」と動いてくれた。その時に一緒に考えて、最終的にオルカンと個人向け国債に着地した話は別記事に書いてある。

▶ 関連記事:【親の運用】75歳の父はオルカンと個人向け国債を選んだ

扉を閉めずに待ってれば、向こうから開けてくれることもあるってこと。それまでは、焦らず黙って積み立てとけばいい。

親の金は、親のもの。俺たちにできるのは、扉を開けて待つことだけ。


出典・参考

コメント

タイトルとURLをコピーしました